あなた
こちらでは今朝から三度に分けて雨が降りました
処暑を過ぎるとひと雨ごとに
少しずつ少しずつ秋の匂ひがしてまいります
如何お過ごしでしょうか
五月の初め あなたから送って頂いた立原正秋の全集
わたしの愛読書となりました
それに 同封して下さっていた朝顔の種は
この夏 満開で 朝露に濡れた花の数をかぞえるのが
毎朝の わたしの日課になっています
今朝は27咲いたのよ
もうしばらくすれば
ご近所の金木犀のかほりが
路地いっぱいに漂ふことでしょう
そちらは何が秋を気付かせてくれるのでしょうね
きっと あなたのことだから
こまめにキッチンで秋刀魚でも焼いて
美味しそうな烟に目をこすりながら
秋をお感じになられているんじゃないかしら
お仕事 順調に進んでいらっしゃいますか
ご無事にお帰へりになられること
心待ちにしております
お帰へりのその日は
あなたの好きな辻が花でお迎え致しますので
そのまま暦應路(りゃくおうじ)あたりを
ふたりで静かに歩きながら
離れていた空白の時間(とき)を
ゆっくり ゆっくり埋めてゆきたいと
今から 楽しみにしています
あの素敵な笑顔でのお帰へりを
指折りお待ち申し上げております
かしこ
P.S.
あなたへのお手紙の末尾に「かしこ」って書いて送ったら
早速届いたあなたからお返事の末尾に
「あほ」って書いてありましたけれど…? 意味不明です。
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