返信 ~紫陽花の砌~
2014年6月25日 絶唱 [手紙] コメント (2)
お手紙は文章ですから涙声までは届きません
でも こみ上げてくる胸をおさえながら
それでも何度も何度もしゃくり上げながら
わたしはこれを書き上げようとしています
あなたのことですからずいぶんとお考えになって
決められたことでしょうが
どうしてもわたしには決心がつきません
結論は早急でなければいけませんか?
あまり突然のことだったので
最初は まさか?でした
でもお手紙を読み進めていくうちに
あなたが真剣にそのことについて
考えていらっしゃることが伝わってきました
これが三行半(みくだりはん)ってものなんだなって
分かるまでちょっと時間が掛かりました
だって便箋7枚にわたってのお手紙なんですもの
洒落にも3行半とは思えませんでした
律儀なあなたですから
携帯のメールでお済ませになさらずに
お手紙で気持ちを丁寧に説かれているんだと思います
そうとは知らず
投函されていた封筒を胸に抱いて
お部屋に戻り封を切り
二枚目の便箋を読むまで
久々にあなたからの文章が読める はずむ気持ちと
何かのお誘いかも知れないという 期待感で一杯でした
わたしはあなたもご存知のように
鈍感に人生を送ってきましたから
ずいぶん以前からあなたが
そのようにお考えになっていたとはつゆ知らず
デートをしていた時なども
ふたりでいる時は ただただもう うれしくて楽しくて
浮かれた気分で喜んでいました
心がスキップするってあの時のことを言うんだと思います。
どんな真剣な恋であっても
5分もあれば忘れることができる潔さを
身上としているあなたのことですから
お手紙を投函された時点で
わたしのことなどお忘れになって
まじめに生活されていることだろうと思います
わたしは逆にあなたからのお手紙を受け取った時点で
苦しい戦いが始まりました
潔くなんてできない・・
でも みっともなく往生際の悪い女であってはいけない・・
そればかり考えて二晩過ごしました
別れたくない 胸を押しつぶされるような気持ちと
最後はあなたの意見を尊重しなければ・・という気持ちに
わたしの暦からすべてが消えてゆく悲しみが交錯して
決心ができずにいます
We’re all alone .
お付き合いを始めた頃あなたから戴いた
とてもなつかしい英語で書かれた文です
その時「ふたりの世界」とわたしは解釈しました
とてもうれしかった
世界中の幸せを独り占めにした感じでした
でも今日は それとは違った訳し方しか
できなくなっている自分に気がつきました
「ふたりはもともと別々」
言葉って難しいですね
同じ文章を読んでも その時の自分の状況で
まったく逆の意味にしか訳せなくなるんですもの
人の心の移ろいや 心変わりに理由を求めるなど
わたしはそのような無粋な女ではありません
ただ 愛した人と一緒に苦労しながら
ささやかに暮らす人生が
女として一番 幸せなんだとずっとずっと信じてきました
今日までそう思い続けてきたわたしのその心に免じて
もう少し もう少しだけお時間をいただけませんか?
このことが現実だと認識できるまで
わたしにはしばらく時間が掛かると思います。
面倒な女だとお思いでしょうが堪忍して下さい
もし それが何日か経っても決心がつかなかった時
あなたの意に副えなかった時
その時は・・その時は あなたから戴いたペンダントを はずしてみます
それまではお守りに持たせておいて下さい
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
おねがい
今日も備前は雨ですか?
でも こみ上げてくる胸をおさえながら
それでも何度も何度もしゃくり上げながら
わたしはこれを書き上げようとしています
あなたのことですからずいぶんとお考えになって
決められたことでしょうが
どうしてもわたしには決心がつきません
結論は早急でなければいけませんか?
あまり突然のことだったので
最初は まさか?でした
でもお手紙を読み進めていくうちに
あなたが真剣にそのことについて
考えていらっしゃることが伝わってきました
これが三行半(みくだりはん)ってものなんだなって
分かるまでちょっと時間が掛かりました
だって便箋7枚にわたってのお手紙なんですもの
洒落にも3行半とは思えませんでした
律儀なあなたですから
携帯のメールでお済ませになさらずに
お手紙で気持ちを丁寧に説かれているんだと思います
そうとは知らず
投函されていた封筒を胸に抱いて
お部屋に戻り封を切り
二枚目の便箋を読むまで
久々にあなたからの文章が読める はずむ気持ちと
何かのお誘いかも知れないという 期待感で一杯でした
わたしはあなたもご存知のように
鈍感に人生を送ってきましたから
ずいぶん以前からあなたが
そのようにお考えになっていたとはつゆ知らず
デートをしていた時なども
ふたりでいる時は ただただもう うれしくて楽しくて
浮かれた気分で喜んでいました
心がスキップするってあの時のことを言うんだと思います。
どんな真剣な恋であっても
5分もあれば忘れることができる潔さを
身上としているあなたのことですから
お手紙を投函された時点で
わたしのことなどお忘れになって
まじめに生活されていることだろうと思います
わたしは逆にあなたからのお手紙を受け取った時点で
苦しい戦いが始まりました
潔くなんてできない・・
でも みっともなく往生際の悪い女であってはいけない・・
そればかり考えて二晩過ごしました
別れたくない 胸を押しつぶされるような気持ちと
最後はあなたの意見を尊重しなければ・・という気持ちに
わたしの暦からすべてが消えてゆく悲しみが交錯して
決心ができずにいます
We’re all alone .
お付き合いを始めた頃あなたから戴いた
とてもなつかしい英語で書かれた文です
その時「ふたりの世界」とわたしは解釈しました
とてもうれしかった
世界中の幸せを独り占めにした感じでした
でも今日は それとは違った訳し方しか
できなくなっている自分に気がつきました
「ふたりはもともと別々」
言葉って難しいですね
同じ文章を読んでも その時の自分の状況で
まったく逆の意味にしか訳せなくなるんですもの
人の心の移ろいや 心変わりに理由を求めるなど
わたしはそのような無粋な女ではありません
ただ 愛した人と一緒に苦労しながら
ささやかに暮らす人生が
女として一番 幸せなんだとずっとずっと信じてきました
今日までそう思い続けてきたわたしのその心に免じて
もう少し もう少しだけお時間をいただけませんか?
このことが現実だと認識できるまで
わたしにはしばらく時間が掛かると思います。
面倒な女だとお思いでしょうが堪忍して下さい
もし それが何日か経っても決心がつかなかった時
あなたの意に副えなかった時
その時は・・その時は あなたから戴いたペンダントを はずしてみます
それまではお守りに持たせておいて下さい
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
おねがい
今日も備前は雨ですか?
絶 唱 ~紫陽花の砌に~
2014年6月1日 絶唱 [手紙]久しぶりにペンを執りました。
お互いに音信不通になってから、もうずいぶん経ちますね。
そして本日は突然、不躾なお手紙を差し上げることをお許しください。
不思議なものです。
おつきあいをしてた時は、一緒にいても、なかなかあなたの気持ちがつかめないで苦しい思いをしたのですが、離れていると冷静になれる所為か、あなたのお気持ちが手に取るように判るようになってきます。
◇
そう あなたが私と人生を共にすることを考えていらっしゃらないことが、離れた空間の隙間を通って少しずつ少しずつ伝わっています。
燃える条件が整っている場合、火種があれば無条件に燃えるのが燃焼の原理です。
確かにお会いした頃は火種はありましたが条件が整っていませんでした。
でも、長い間かかってその条件を揃えてきて、やっと環境もそれなりに整った時点で肝心の火種が消えてしまったようです。
私たちは もう一度 初めからやり直す狂おしい情熱も、今から燃え上がる激しい青さも色褪せて、息絶え絶えの状態です。
がむしゃらに好きになって、胸を掻きむしるような愛しさに泣きながら寄り添い、愛した女にまっしぐらになるのが男なら、愛された男に尽くしきるのが女だと、あなたに教わってこれまでやってきました。でもこのままでは私はボロボロになってしまいます。
◇
思い出して下さい。
愛し合うとはお互いを見つめ合うことではなく、お互いが同じ方向にむかうことだとあなたは仰って、お食事をする時も並んで坐り、同じ景色を見て楽しみました。
向かい合ってお互いを見ながらお茶を喫むこともありませんでした。
確かに、確かにいつもふたりは同じ風景をずっとずっと見つづけてきたと思います。
でもその時、ふたりの目線は常に平行ではなかったでしょうか?
見つめ合わないで、どうして相手の目の中の喜びや悲しみが判るでしょうか。
向かい合わないで、どうして相手の逡巡や躓きに気が付くでしょうか。
愛し合うとはお互いの感情の軌跡が交わり合い、絡み合うことではないでしょうか。
◇
あなたと離れて暮らしたこの幾年間、正直 何があってもどんな時も、私の心はあなたへの想いだけが日々の支えでした。
愛だの恋だのと気恥ずかしいことを言える歳でなくなっても、女の心の秘められた部分には、やはり甘酸っぱいものが残っています。
それを単に女の性(さが)だと片づけるのは 少し切ない気がします。
人は嘲うかも知れませんが、この身体も唇も あなたを憶えたまま老いてゆくんです。
◇
今、私・・こんな女でもいいと仰って下さる方がもしいらっしゃれば、一緒にいて、ささやかながら、その方に私が出来る精一杯のことをして差し上げたいと思うようになりました。
無理をしないただ普通の おだやかな生活がほしいと思うようになりました。
基盤の安定は女の本能です。そしてこれは私の本心です。
私はこの手紙で私の本音をあなたにお伝えしようとしています。
◇
あなたと知り合ってからの日々は本当にまぼろしのようでした。
この手紙はあなたからお便りが欲しいがためのものではありません。
私の絶唱とでもお受け取り下さい。ですからこれを最後の便りと致します。
あなたも決して私にお返事などお書きにならないで下さい。
身のほどをわきまえぬ女からの・・長い長い三下半なのです。
遠い空の下、あなたのお幸せをいつもお祈りしています。
最後に、あの日あなたが綺麗だと仰っていた紫陽花、こっそり撮っておいたものを同封いたしました。
こんな綺麗な紫陽花はあの時 私もはじめて見ました。
さようなら さようなら私の大好きだったあなたへ。
※三下半(みくだりはん)・三行半=江戸時代、簡略に離婚事由と再婚許可文言とを3行半で書いたからいう。
夫から妻に出す離縁状の俗称。<広辞苑より>
今朝 届いたあなたの便りの中に風船かずらの種が数個入っていました。
まっくろな小さな粒のその真ん中に、白いハートの形がついている、かわいいかわいい種でした。
これは昨年あなたの家のベランダの鉢にわたしが撒いた風船かずらの種から二代目の種ですね。
育てて下さったのね。
便箋に「お元気ですか ぼくは元気です」
それだけ書いて、他に何も書かれていません。
ずっと離れて最後の欄に、あなたの名前ではないサイン「織部周二」と書かれていました。
ウフフッ・・すぐあなただと判りました。
そんなあなたのやさしさを、今日ほどうれしく悲しく思ったことはありません。
◇
これから先、いつの日会えるかわからない、このままずっと会えないかも知れない。
それでもわたしはその日を楽しみにして暮らしてゆこうと今日決めました。
先ほど庭にその種を撒きました。
大切に大切に命をつないでゆきます。
いつか何代目かの種がとれたその日、きっとあなたに会えると願っています。
ありがとうございました。
わたしたちふたりの愛の種を、ありがとうございました。
窈 子
【参考】立原正秋著「花のいのち」2006/5/19 記
P.S.
「 夜の衣を返して着る 」というのは
恋しい人の夢を見るための
萬葉の頃からのおまじないなの
あなたが恋しくて たまらない夜は
せめて衣を裏返して着て
夢で逢えることにワクワクしてお布団に入る・・・
初夢は忘れたと言いましたよね
あれは ウソ♪
わたし はっきり憶えているんです
大晦日に除夜の鐘を聴いたあと
パジャマを裏返しに着て
あなたと夢で逢えることを
おまじないして寝たんです
わたしの初夢は今年も
またあなたでした
いとせめて 恋しきときは 射干玉の
夜の衣を 返してぞ着る (小野小町)
あなたから初めての言葉が先ほど届きました
「 800Kmは遠いね 」
なぁ~に? たったそれだけぇ~?
愛しているよとか
好きだよとかはないの?
ほんと無愛想なんだね
「 800Kmは遠いね 」
そんなこと わかってんじゃん
自転車で毎日通ってって言ってないじゃん
たまにあなたから届くやさしい言葉で
わたし きっと頑張れるから
ねえ・・・約束して
いつもわたしを見つめていてくれるって
どちらにしても 初便り ありがとう
だいじにするね
あなたからの初めての言葉 先ほど届きました
うれしくって うれしくって
ほんとうに もうどうしよう
わたくしがあなたに お伝えしたいことは
すべて行間にあります
だからといって決して比喩を使っているわけではなく
婉曲的な言葉を置いているわけではありません
わたくしの愛を形に喩(おきか)へると欺瞞になるだけなのです
素直じゃないのかも知れませんね
直截的なあなたのお気持ちは
手斧で打つようにわたくしの心に伝わっております
でも どうか
もう しばらくだけ わたくしをお見守り下さい
※辻が花:室町中期から江戸初頭にかけて盛行した着物などの絵模様染。想像上の幻の花。
かぐや姫が生きていたら求婚者の一人にこの花をリクエストしたかも知れない。
立原正秋著に「辻が花」がある。
手 紙 ~Without You~
2014年5月27日 絶唱 [手紙]
外は朝から音のない細い雨。
ピアノをバックにMariah Careyが切なく歌っています。
I can’t live , if living is without you .
I can’t give , I can’t give any more .
男は女によって変わり、女は男によって変わる。
あなたの仰った通りです。
わたし あなたにお会いしてからずいぶんと変わりました。
ピアノをバックにMariah Careyが切なく歌っています。
I can’t live , if living is without you .
I can’t give , I can’t give any more .
男は女によって変わり、女は男によって変わる。
あなたの仰った通りです。
わたし あなたにお会いしてからずいぶんと変わりました。
あなたの今までの人生の中で
死ぬほど好きになった人は何人いるでしょう
こんど数えてみて下さい
そしてその時 三本の指を折るまでに
躊躇しないで わたしの名前を呼んで下さったなら
もう 死ぬほどうれしい
死ぬほど好きになった人は何人いるでしょう
こんど数えてみて下さい
そしてその時 三本の指を折るまでに
躊躇しないで わたしの名前を呼んで下さったなら
もう 死ぬほどうれしい
あなた
こちらでは今朝から三度に分けて雨が降りました
処暑を過ぎるとひと雨ごとに
少しずつ少しずつ秋の匂ひがしてまいります
如何お過ごしでしょうか
五月の初め あなたから送って頂いた立原正秋の全集
わたしの愛読書となりました
それに 同封して下さっていた朝顔の種は
この夏 満開で 朝露に濡れた花の数をかぞえるのが
毎朝の わたしの日課になっています
今朝は27咲いたのよ
もうしばらくすれば
ご近所の金木犀のかほりが
路地いっぱいに漂ふことでしょう
そちらは何が秋を気付かせてくれるのでしょうね
きっと あなたのことだから
こまめにキッチンで秋刀魚でも焼いて
美味しそうな烟に目をこすりながら
秋をお感じになられているんじゃないかしら
お仕事 順調に進んでいらっしゃいますか
ご無事にお帰へりになられること
心待ちにしております
お帰へりのその日は
あなたの好きな辻が花でお迎え致しますので
そのまま暦應路(りゃくおうじ)あたりを
ふたりで静かに歩きながら
離れていた空白の時間(とき)を
ゆっくり ゆっくり埋めてゆきたいと
今から 楽しみにしています
あの素敵な笑顔でのお帰へりを
指折りお待ち申し上げております
かしこ
P.S.
あなたへのお手紙の末尾に「かしこ」って書いて送ったら
早速届いたあなたからお返事の末尾に
「あほ」って書いてありましたけれど…? 意味不明です。