病院事件簿(1) 『炭パック事件』
 2003年12月。
そこは入院患者400人以上は収容出来るこの地方では最も大きな病院。
突然の事故で頸の手術をすることになったぼくは、その年の暮に急遽そこに入院した。
外科病棟の患者の大抵は、患部の痛みがなくなれば、退院までは傷が癒えるのをただ待つだけの暇人である。
リハビリに汗を流す人もいるけれど、持て余す時間を読書に費やす人も、ひねもすテレビを観て過ごす人もいる。
人それぞれの入院生活の過ごし方、暇のいじくり方がある。
他の患者さんに迷惑が掛からなければ、何をしていても取り立てて誰にも何も言われることはない。



 年も明け、1月の雪のしんしんと降るある夜。
眠れぬ徒然の退屈しのぎに、昼間に売店で買った美容パックを顔にした。
男やから美容目的なんかではなく、あくまでも暇つぶし。
いやそれはテレ隠しで、ほんまは顔の皺の一本でもなくなればいいと思ってやった♪  d^o^
ゲル状の備長炭の上等の炭パックで、色は真っ黒。
なんぼ暇つぶしやからというても、男が昼間っから顔にパックするには勇気が要る。
それも四人いる病室でするのはさすがに・・・ぼくにはそんな根性はない。純情やから。
夜にやった♪ ^o^y



 夜中やったから、誰も見ていないことを幸いにそのままトイレに行った。
そして出てきて廊下の角を曲がった所で・・・偶然 懐中電灯を持って巡回中のナースと出くわした。
炭パックで真っ黒になっているぼくの顔を、電灯でスポット状態で照らして・・・そして大声で・・・
「ぎゃあああ~~~~!!!」 
その声にはこっちの方がびっくりした!
病棟は大パニックになった。
警備員が飛んで来るゎ、入院中の患者さん達が集まって来るゎ、夜中にどえらい騒ぎになってしまった。



 あくる朝、看護師長さんに呼び出されてぼくはすごく怒られてしまった。
「今度あんなお騒がせをしたら、強制退院してもらいますからね!」
ぼくは咄嗟に「すんませんでした」と言ったんですけど、
ほんまのことを言うと、なんで怒られなあかんのかよう解らんかった。
あのナースも、何もあんなに大きな声でビックリせんでもよさそうなもんや。

 あれから10年経った。
たまにその病院に行くことがある。
あはは・・・あの事件のことは語り継がれて、今ではぼくはその大病院の伝説の人になっている。


コメント

美雨
2014年6月14日21:24

再度 こんばんは パック事件?もしかし私もその場にいたら
悲鳴をあげると思う

六魯
2014年6月14日23:54

美雨さんは怖がりなんですか?
夜の病院、しかもトイレという恐怖のシュチュエーションが揃っていますからね♪

美雨
2014年6月15日21:21

私 怖がりやかも(笑)
お化け屋敷とか 誰かに捕まって下を向いたまま
走り去りたいほうですね。
六魯さん 夜中に 目の前に炭パックで真っ黒な顔した人が
現れたら誰でもビックリですよ(笑)

六魯
2014年6月16日18:37

あのシチュエーションはナースにとって、非日常の出来事が目の前で突如展開されたから、精神状態がそれを恐怖として捉えたんでしょうか?
それとも初めから恐怖心を抱いて巡回していたから、何でもないことに驚いたんでしょうか?
ぼくの顔面を目掛けて彼女は懐中電灯を投げつけたんですよ。
こっちの方がも驚きました(笑)